定量分析化学実験書


1.中和滴定

1.1 0.05M炭酸ナトリウム標準溶液の調製

 容量分析において、酸の濃度を決定するためには、アルカリの標準溶液を用いなければならない。アルカリのうちで、その純度と扱いのうえから標準溶液を調製するのに最も適しているのものは、無水炭酸ナトリウム(Na2CO3)である。そのため定量分析では、一般に炭酸ナトリウムの標準溶液を調製するのが常である。  ここでは、中和滴定の操作を始める前に、まず、0.05M炭酸ナトリウム標準溶液の調製法を理解するとともに、その操作を習得する。

[操作]

1.無水炭酸ナトリウム(110℃で1時間乾燥してある)約1.3gを秤量びんにとり、手早く正確に秤量する。

2.秤量した炭酸ナトリウムを溶解し、これをメスフラスコで250mlとする。溶解は次のように行う。

1)秤量びんの内容物を静かにビーカーに移し、内壁に付着している微粉末を少量の蒸留水(以後単に「水」という)で数回洗って、すべて流し入れ、50〜100mlの水を加えて完全に溶解する。

2)あらかじめ水洗してある250mlのメスフラスコにガラス棒を伝わらせて静かにビーカーから移し、洗浄びんの水でビーカーの内壁、ガラス棒を洗浄して洗液をすべてメスフラスコ内に流し入れる。ビーカーの洗浄は2〜3回行う。

3)メスフラスコの標線まで正確に水で薄める。このとき、標線を過ぎないように注意して行う。

4)メスフラスコの天地を逆にしてよく混合する。

1.2 塩酸溶液の標定

 中和滴定に最も多く使用される酸は、塩酸、硫酸である。これらの溶液はその濃度を 正確に決定しなければならない。ここでは 0.05M炭酸ナトリウム標準溶液を用いて、塩 酸溶液の濃度を標定する方法を理解する。

[要点]

炭酸ナトリウムと塩酸の反応は、式(1)(2)のように2段階に進行する。

Na2CO3 + HCl NaCl + NaHCO3 (1)

NaHCO3 + HCl NaCl + H2O + CO2 (2)

Na2CO3 + 2HCl 2NaCl + H2O + CO2 (3)

 このとき、(1)の反応がちょうど完了したときのpHはおよそ8であり、(2)の反応がちょうど完了したときのpHはおよそ4である。したがって、メチルオレンジを加えて液を黄色としたのち、液が赤味がかるまで塩酸を加えると、この反応の中和点となる。

[操作]

1.濃塩酸10mlをとり、半分ほど水を入れた1Lのポリビンに入れ、水を加えて1Lとする。

2.ビュレットを使用する塩酸溶液約10mlで数回洗浄し(この操作を共洗いという)、ろうとを使って塩酸溶液を0目盛りの上まで入れ、ビュレットのコックを開いて0目盛りに合わせる。

3.100mlのビーカーに水40〜50mlを入れ、指示薬としてメチルオレンジ2滴を加え、ビュレットから塩酸溶液を1滴(出来れば半滴)加えて比色液とする。

4.0.05M炭酸ナトリウム標準溶液をホールピペットで正確に20mlとり、コニカルビーカーに入れ、メチルオレンジを2滴加える。

5.コニカルビーカーを揺り動かしながら塩酸溶液を滴下してゆく。

6.溶液の色が少しでも赤味がかったら滴下を中止し、弱く煮沸してCOを除く。(煮沸は1回でよい)

7.液が黄色になったら冷却して滴定を続け、比色液と同一色になった点を中和点として、ビュレットの目盛りを記録する。

8.3回の滴定値の差が0.ml以内になるまで滴定を繰り返し、その平均値を取って塩酸標準溶液の濃度を求める。

1.3 水酸化ナトリウム溶液の標定

 中和滴定で最も多く使用される塩基(アルカリ溶液)は、水酸化ナトリウム、水酸化バリウムなどである。これらの溶液はその濃度を正確に決定しなければならない。ここでは、炭酸ナトリウム標準溶液を用いて標定した塩酸溶液で水酸化ナトリウム溶液の濃度を標定する方法を理解する。

[要点]

NaOH HCl NaCl + H2O

 強酸と強塩基との反応のpHの変化は急激で、中和点ではpHは3から11へ急変し、その中心の値は7である。ここでは、強酸で強塩基を滴定する場合であるから、メチルオレンジを加えて液を黄色としたのち、液が赤味がかるまで塩酸を加えた点が反応の完了点である。

[操作]

1.水酸化ナトリウム約1gを上皿天秤で手早くはかり取り、水で溶解して250mlとする。水酸化ナトリウムは潮解性であり、またCOを吸収してNaCOを作るので、手早く操作しなければならない。

2.水酸化ナトリウム溶液 20mlをホールピペットでコニカルビーカーにとり、これにメチルオレンジ2滴を加える。

3.ビュレットから0.1M塩酸溶液を滴下し、比色液と同一色になるまで滴定を行う。

4.次にコニカルビーカーを弱く煮沸して冷却し、もし黄変したならば比色液と同一色になるまで再び滴定を続け、終点を求める。

5.3回の滴定値の差が0.ml以内になるまで滴定を繰り返し、その平均値を取って水酸化ナトリウム溶液の濃度を求める。

1.4 ソーダ灰の定量(ワルデ法)

 ソーダ灰は、炭酸水素ナトリウムまたは、炭酸ナトリムを焼いて製造した無水物で、各種化学工業の原料として大切な役割を占め、その製造は最も重要なものの一つである。ソーダ灰中には主成分炭酸ナトリウムのほかに、微量の水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが入っているが、ここでは、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムの2成分の定量法について理解する。

[要点]

炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合物に塩酸を加えた場合に起こる反応は、次の3つである。

Na2CO3 HCl NaCl NaHCO3 (1)

NaHCO3 HCl NaCl H2O CO2 (2)

NaOH HCl NaCl H2O (3)

 これらの反応が完了したときのpHは、(1)がおよそ8であり、(2)はおよそ4である。(3)は、中和点において11から3に急変する。したがって、この混合物の溶液にフェノールフタレインを加えて液を赤色として、この赤色がちょうど消えるまで塩酸を加えると(1)と(3)の反応が完了する。これにメチルオレンジを加えると液は黄色となるが、これが赤味がかるまで塩酸を加えると(2)の反応が完了する。

図1.1 各成分と滴定値の関係

[操作]

1.ソーダ灰約1gを上皿天秤ではかりとり、秤量びんに入れて正確に秤量する。

2.試料を50〜100mlの水に溶解し、250mlメスフラスコに移し、標線まで水でうすめる。

3.この溶液20mlをホールピペットでコニカルビーカーにとり、これにフェノールフタレインを2滴加え、0.1M塩酸標準溶液で滴定を行う。

4.液の赤色が消えたら、ビュレットの値を読む。この値を終点(A)とする。

5.ついで、この溶液にメチルオレンジを2滴加え、引き続き塩酸標準溶液で滴定を行い、だいだい色になったときを終点(B)とする。終点(A)から(B)までに要した塩酸標準溶液の体積をyとする。

6.この滴定を3回繰り返し、xとyの平均値から試料溶液中の炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの重量および濃度を求める。



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