近赤外について

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光(電磁波)と近赤外領域

 光はその波長の長さによって,X線,紫外光,赤外光・・・などがあります.(紫外線,赤外線ともいう)

近赤外は,波長領域にして可視領域と赤外領域の間に位置しています.(800〜2500 nm)

近赤外光の特長

 われわれの身のまわりにあるたいていの物質は,近赤外光をほとんど吸収しません.(厳密には少しは吸収します)

すなわち,近赤外光はたいていの物質を透過することになります.

 近赤外光は,X線や紫外線などと違って,例えば人体に照射されてもほとんど悪影響はありません.安全な光なのです.

 あまりよく知られていないかもしれませんが,実はわれわれの身近で,近赤外光はたくさん利用されています.

テレビやエアコンなどのリモコンや,CDプレーヤーといった光ファイバやワイヤレスデジタル通信などの光通信に用いられています.

 

近赤外光を用いる計測法の例

1. 果実の糖度センサー

 皆さんは,ミカン箱に“光センサー選果”という表記を見たことがありますか?

 実は,ここで使われている光は近赤外光なのです.

 果実を傷つけることなく,一瞬にして素早く果実中の糖度を測定することが出来ます.

 測ることができるしくみですが,近赤外光を果実に照射してそこを通り抜けてきた光(透過光)を計測して,

 果実中の水分量やタンパク質の量,糖量を測っています.

2. 生体内の酸素量モニター

 血液中のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンは体内で酸素(O2)と結合します.

 結合していない状態と,結合している状態では,近赤外領域における光の吸収度合いが変化します.

 その違いを利用して,人体にほとんど影響を与えることなく,リアルタイムで血中の酸素を測ることができます.

3. ガンの診断および治療(光化学療法)

 ガン細胞に特異的に吸着し,光を照射すると,発光して,しかも同時にガン細胞を破壊するという夢のような色素があります.

 この色素は,光を照射すると,発光によってガン細胞の診断が行うことができ,

 発光と同時に発生する活性酸素(一重項酸素)によって,ガン細胞を破壊して治療を行うことが出来ます.

 近赤外光は人体には悪影響を及ぼさず,ガン患者への負担もかなり軽減されるとして注目されています.

 

近赤外光についてもっと詳しく知りたい人は・・・

 下記の本を勉強して下さい.

岩元睦夫,河野澄夫,魚住純 共著,“近赤外分光法入門”,幸書房(1994).

尾崎幸洋,河田聡 編,“日本分光学会測定法シリーズ 32 近赤外分光法”,学会出版センター(1996).